miu404第6話感想

miu404第6話はめちゃめちゃよくできていたと思ったので、少し言語化しておきたい。

まず、話は星野源が犯人なのかもしれないと言う疑いからスタートする。星野源が行っていないはずの屋上になんの酒が置いてあるのかと言うことを知っていたからだ。

村上虹郎の死因の設定の仕方が巧妙で、酒が飲めないのに飲んでいた。まるで屋上から転落したような現場があった。星野源が第一発見者。初動捜査は星野源の仲間がやっていた。結果事故死ということになった。

ここまで聞いていると、グルでやっていたのかなということが頭をちらつく。そして、初動捜査の橋本じゅん麻生久美子もなかなか喋ろうとしない。不信感が募っていく。

そこで橋本じゅんの独白。星野源が行っていない屋上の酒を知っているということが明らかになる。そこで、星野源への怪しさが募ると同時に遺書の存在が明らかになる。この前に、星野源の相棒への思いを語るシーンを入れているのもにくい。一つ間違えば、星野源への怪しさが完全になくなってしまうようなタイミングである。

 

この辺りから、星野源の回想シーンが入るようになる。回想シーンは意味深で、星野源村上虹郎を説得したり諭したり謝ったりするシーンである。きっとここに動機があるんだろうなと思わせるようになっている。村上虹郎側になんらかの原因があるように描かれている。一課の刑事も二人になんらかの諍いがあったことを示しているし、この回想シーンで星野源の嘘が明らかになる。彼は間違いなく屋上に行ったことがあるのである。ここまでみて視聴者の関心は村上虹郎は一体どんな悪事をしたのかということになる。星野源が殺してしまうくらいの悪事とはなんなのかである。

 

CM明けて、遺書は遺書ではなく刑事を辞める退職願であることが明らかになる。このミスリードも大きい。遺書とくれば、自殺かなと思ったり、こねくり回して殺人とかかなとか思うわけであるが、それが退職届になることで、一気に形勢は変わる。星野源が犯人なら、遺書をタイプライターで書いたりするのではないかと思うが、本人が手で書いた退職願であった。さらに遺書ではないので、事故死の線もそもままである。それまで積み上がってきた星野源への怪しさが薄れていく。それでは自殺か事故死か。

同時に村上虹郎の視点で事実が明かされていく。そこにもいろんなミスリードがあって、怪しい女性容疑者と、未熟な村上虹郎の間で色恋が発生していて、犯人が逃げることを手引きしていたのではないかとか。虹郎にタリウムの症状が出ているような描写がされ、虹郎の証拠が出たことで犯人が逮捕されるような描写がされるので、虹郎が犯人を捕まえる決定打をえたんじゃないかと思いきや、そもそも今まで犯人だと思っていた女の容疑者が犯人ではなかったりした。それまで虹郎が犯人を逃したと思っていたので、逮捕されていたということも新事実である。

 

そして、結局あっけなく村上虹郎が事故死だったと明かされる。miu404お得意の何も起きてなかったという結論である。星野源は相棒を殺したどころか、相手のことを思っていて事故死についてすごく悔やんでいるということになる。ここでそんなことが明かされてあと半分くらい時間あるのにすごいなと思うわけである。

しかし謎は残されていて、星野源はなぜ屋上に行っていないと嘘をついたのかである。ここでまた大きいミスリードが明かされる。それまで回想シーンだったと思っていたシーンでランプが点灯する、つまりはスイッチがonになる演出があるシーンは星野源がこうしていれば変わっていただろうかという妄想であったのである。

また村上虹郎は、自殺であったのか事故死だったのか本当の意味ではわからない。それに星野源は苛まれていた。そこからまだ展開があるのだ。なぜあんな低所から落ちてしまったのかということである。あることに気づいた綾野剛は、あの日の村上虹郎と全く同じように急いで階段を降り、階段から滑り落ちそうになる。あの日の村上虹郎をそのまま再現するような出来事ってなんなんだと引き付けておいて、CMである。

 

そうして、結局村上虹郎は正義感から転落事故を起こしてしまったということが明らかになる。星野源は、自分が原因でないことに少し救われる。そして綾野剛の生命線が長い宣言で心があたたかくなっておしまいと言う話である。

 

 

大きなミスリードとして、前半の星野源周囲への疑心暗鬼を誘うと言う展開、回想シーンが嘘だったと言う展開がある。

また、最後のネタバラシは綾野剛が再現してしまうと言う一般性を持っていると言うことがすごいのである。そんな当たり前みたいなことに気づいていないのかとなるからである。

大きなミスリードだけでなく小さなミスリードや、今後の展開のための伏線などもあるにもかかわらず、星野源の心情を共感することで強い感動を覚えると言う内容が詰まりすぎていると言えるくらい詰まっている話で、一体どうやったらこんだけ辻褄のあう作品が作れるのだろうと感動してしまう。冷静になればなるほど、どうやって作ってるのかわからない。

 

こう言った、作ってる側の視点というのは、エンタメを見るときに一つの面白さの尺度になるように思う。多くの視聴者はあくまでその作品がどれだけ先が気になるかとか、どんな結論かとか、どんな感情が想起され、どんな学びがあるのかとかをみたがるが、今回のような傑作には気づきづらいのではないかと思う。決してそう言う見方が悪いとか浅いと言っているわけではなくて、この6話も、あんまり面白くないなと思う人の気持ちもわかるのである。結論が事故死だからだ。ただ、ここまでの話の構成を見てみると本当にただ事ではない。間違いなく傑作であると思う。

面白いってなんなのかって本当にしばしば思う。この6話は面白いとは何かを考えるのに格好の教材かもしれない。